2 それは卵焼きから始まった。

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「うわ。 ……沢渡さんの卵焼き、何かすげぇ美味そう」 ん? 頭上から声がして、顔を上に上げる。 「ありがとう村上君!  良かったら一個食べてみる?」 声の主は同じクラスの村上君。 野球部で捕手してる、いかにも運動部って感じの男の子。 ……ってあれ? 「……って、村上君は今日はお弁当なんだ?」 彼はウチの学校の野球部に入るため、長崎からやって来た、俗に言う『野球留学』してきて、学校の隣の寮に入ってた……はず。 で、寮生はお昼は食堂で食べてる……はずなんだけど。 「ありがとー! 一個もらうけんなー…(ぱく)……って、うんめー!! ……って、(もぐもぐ)今日は昼は食堂が何か水漏れのチェックとかで使えないらしくてよ-。で、今日は寮生は弁当屋の弁当って訳」 彼は空になった弁当箱をゆらゆらと揺らしつつそう言って。 .
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