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高校の入学式。
桜が咲いていた。
一本に続く長い道の両端に桜の木が続いて植えてあった。
春の風に吹かれて、桜の木がザワザワと話をしているように揺れている。
自分の髪が風に持っていかれそうで、慌てて髪を撫で下ろした。
桜の花びらは、風で道に落ちてピンク色のカーペットのように広がっている。
「きれい」
優子は、小さく呟いた。
満開に散っていく桜に、目を奪われていく。
もっとこの景色を見たいと、無意識に足を動かそうとした。
「桜通りからは、学校に行けないよ。その先には海しかないから」
ふと、誰かに、そう言われて振り返った。
振り返った先にいたのは、
自転車に乗っている、黒髪の男の子だった。
その男の子は、何とも言えない優しい笑みを浮かべてる。
高校の春――
私と彼は出会った。
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