第一章:「少年」

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そこまで分析してからは早かった。 ふらふらと道を歩き、偶然を装ってその店の軒先で躓いて見せ、倒れ込む。 嫌そうな顔をする婆にぺこりと頭を下げ、へらへら笑いながら立ち上がり、素早く立ち去る。 懐に、干物を蓄えて。 「へへっ、ざまぁ! ざまぁ!」 久し振りの食い物に、嬉しそうに顔を火照らせ、街の外れの川べりまで走り抜けた。 辺りを見回し、追いかけられていない事を確信してから、橋の下に潜り込んだ。 懐を弄り、愛しの食い物と漸くのご対面を果たす。あまりの嬉しさに鼻をこすりつけ、それを確かめる。 「あぁ……塩の匂いだ。泥じゃない、食いもんだ」 涙すら浮かべて喜ぶ、あぐりの心に罪悪感などない。 ただ生きる。 それだけがあぐりの原動力だった。 意を決して、その尻尾にかじりつく。 「う、めぇ~……うめえよう」 あぐりは生を実感して、泣きながらただの干物を味わった。 だがその感動は、甲高い声に遮られた。 「にゃー、にゃー」  
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