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「や…やっと着いた…」
「さっすがアリス!俺一人じゃこんなに早く着かなかったぜ。ありがとうな!」
目的地の建物が目の前にあるにも関わらず、真反対の道に進んでいくのがエースだ。
そんな彼を引っ張ってここまで連れてくるのは一苦労だ。
「エース、あなた高校時代より迷子になってない?」
「えー?そうかなあ。自分じゃよくわかんないぜ!はははっ」
いつものごとく笑顔で答えるこの顔を一発殴ってやりたくなる。
「はあ…もう疲れたし帰りたいわ。」
「なになに?あんなのでもう疲れちゃったの?君って体力ないんだなー。」
「あなたとは違うのよ」
「じゃあ俺が君の体力作り、手伝ってやろうか?」
「…遠慮しておくわ」
エースと体力作りなんて一体何をされるかわからない。
しかもこころなしか距離が近くなっている。
「遠慮なんてしなくていいのに。君は体力をつけられるし、俺は楽しめる。お互いにとっていいと思うけどー。」
「って、あんた何をするつもりよ!絶対体力作りなんかじゃないでしょう」
エースの言う体力作りはやっぱりろくでもなかった。
エースがどんどん距離を詰めてくるから私もあとずさる。
高校のときからこいつはいつもこういう際どいことを言ってきていた。
それでもそれ以上は何もしてこないから、私も何もしなかった。
男女の友達にしてはちょっと距離が近くて、恋人とは呼べない中途半端な関係。
そんなエースとは高校卒業後は全く会わなかった。
だから実を言うとエースに会いたかった気持ちもある。
それは友達としてなのか、それとも恋愛感情としてなのかは自分にはよくわからない。
「ははは!俺ってそんなに信用ない?心外だなー。」
ついに壁ぎわまで追い詰められてしまった。
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