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「そこどきなさいよ。みんながいる広間に早く行かなきゃ。何のために成人式に来たんだか分からないわ」
「んー。嫌だ」
きっぱりと彼はそう言う。
「君は俺よりも他のやつに会いたいのか?せっかく久しぶりに会ったのに、つれないなあ」
「エース以外にも高校卒業以来会っていないたくさんの人がいるんだもの。あなたにばかりかまっていられないわ」
「ひっどいなあ。俺はこんなに会いたかったのに」
と言うやいなや ちゅっ と軽いキスをされた。
しかも口に。
状況が理解出来ない私は動きが止まってしまう。
今、一体何が起こったのだろう。
高校のときに越えなかった一線を彼は越えようとしているのか。
「ぼーっとしてるね。一回じゃ足りなかった?」
と、今度はほっぺたにキス。
やっと頭が回ってきた。
「!!!い、いきなり何するのよ!」
真っ赤になってそう答える。
「いきなりじゃないよ。本当は高校のときからずっとこうしたかった」
どきっとする。
「でも高校のときは、アリスとユリウスとの三人で楽しかったし、君も身構えてたから別に今の友達のままでもいいかなって思ってた。」
エースにしては珍しい真しつな顔。
赤い瞳は少し熱っぽい。
「こうして離れて、改めて思った。俺は君が好きだよ」
「好きだ。俺と一緒にいてくれないか」
その言葉は私の中にすとんと落ちてきた。
ああ、私はエースのこの言葉を待っていたんだ。
間際らしい態度じゃなく、はっきりと言葉にして欲しかった。
じゃないと安心できないから。
自分から言葉にするには恥ずかしいから きゅっ と気持ちをこめて抱きしめた。
「ははは!君の心臓すっごくどきどきしてる。」
「う、うるさい」
顔を上げると嬉しそうな笑顔の迷子。
目を閉じて、どちらからともなくキスをした。
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