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もうエースとここ100時間帯ほど会っていない。彼のことだ。きっとまた何処かで迷っているんだろう。いつものことだ。
頭ではそう理解しているのだがやっぱり寂しい。せっかく恋人同士になったのだから…
といっても自分達は本当に恋人同士なのだろうか。まだ私からは彼に好きだと言ったことがない。好きだと言いたいがなかなか言いだせない。彼はそんな私もうじうじしていて可愛いというが、本当にこのままでいいのだろうか…
***
「ん…」
何だろう。身近に温もりを感じる。
そっと目を開けてみると視界いっぱいに赤いコートが見える。
ああ、エースが帰ってきたんだ。
待ち焦がれた騎士が目の前にいて、嬉しくって抱きついた。
もう離れないように。きつくきつく、ぎゅっと。
そうしてまた目を閉じた。
そんな素直な自分はきっと寝呆けていたんだろう。後々自分の行動を後悔するとは。
「ふ…」
唇に何か温かいものが触れた。
触れて、すぐに離れていった。
「おはよう。アリス」
あんなに待ち焦がれたエースの声が聞こえる。
寝る前にはいなかったから、これは夢なのだろう。
私はまだ目を閉じたまま。
「まだ起きない…か。しかたないなあ。じゃあ奥の手ということで」
不穏な言葉が聞こえてきたような気がした。
「ん、んん!」
何やら熱いものが口の中に入ってきた。
押し返そうとするがあっさりかわされてしまう。
息が出来なくて、苦しくて、目を開けてみるとそこには赤い瞳。
エースが帰ってきたんだわ、と確信。
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