寝起きの君へ

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エースの唇で涙を拭われる。 「あんたは私がどういう気持ちで待ってるかわからないの?いつ帰ってくるか分からない人を一人で待ってるの。」 「うん」 「お城でずっと待ってるの。」 「うん、うん」 「寂しくって悲しいの」 「うん、うん、うん」 「わ…私、は…あなたのことが…」 「うん、うん、うん、うん」 「って聞いてるの?」 「うん!」 「いやあ、俺って愛されてるなあって思ってさ。君にそんな思いさせるくらいなら一緒に旅に連れていけばよかったぜ!」 「え?」 「君があまりにもアウトドア嫌がるから仕方なしに置いていってたけどー…」 それはいつ帰れるか分からないからだ。 「君がそんな可愛いこと言うんだもんな。一緒に連れてっちゃえば誰にもとられないし、いい案だ」 にっこりと笑う。その顔が少し怖い。嫌な予感がする。 「そうと決まったら早速」 と言うやいなやお姫様抱っこをされた。 「壮大な旅にレッツゴーだぜ!」 「いやよ!私三時間帯後に仕事なのに!」 「君は本っ当に真面目だなー。そんなこと役無しに任せとけばいいのに。っと、さあ飛ぶぜ。しっかり捕まっててくれよな!」 私を抱き抱えた彼はどうやらベランダから飛び降りるつもりらしい。 「って、なんでベランダから外に出るのよ!私まだ死にたくないわ!」 そう、ここは三階なのだ。打ち所が悪ければ死んでしまう可能性もあるだろう。 「ははは!だってここから降りたほうが早く外に行けるだろ?それにアウトドアにはスリルがつきものだ。」 その瞬間にもう身体は地面から離れていた。 「ぎゃあああああ」 我ながら可愛らしくない叫び声だ。 「ははは!女の子らしくない叫び声だな!」 そんなのわかってるわよ。 しかしそれどころではない。 必死にエースにしがみつく。
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