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「……総司、覚悟は出来てんだろうな?」
屯所の前に待ち伏せしてた土方さんを、一瞥する。
そして、素直に句集を差し出した。
「はい、いらないから返す。 んじゃ」
「―――……は? どうしたんだよ、お前。 何かあったか?」
「別に何もないけど、あの頃を思い出したから」
意表を突かれたらしい土方さんに、俺は飄々と答えてみる。
そして段々、その鬼みたいな形相が剥がれていく。
「……また、泣いたのか?」
「――悪い?」
「いや。 わざわざ性別まで隠して、刀なんて持ちやがって」
「俺の意思だから。 そんなに心配すんなよ」
「本当に、俺達の為に―――」
「―――ねえ、俺が何の為に刀に執着してるか分かる?」
「あ? それは―――」
「“俺達を守る為”? ちげえよ。 強くなる為だ」
「………そうか」
そう言って土方さんは、あたしの、いや俺の頭を撫でる。
普段からは想像出来ない優しさに、また泪が出そうになった。
―――……ああ、あたしはこの人には敵わない。
いつもいつも近藤さんと仲が良くて、嫉妬した事もあった。
だけど、それを見る度にあたしは感じてた。
―――……そう、今みたいに。
でも大好きなんだ、あたしは。
この人達が。
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