出 逢 い

10/15
前へ
/75ページ
次へ
ずいぶん、泣いていた。 一刻くらい、経ったのかな。 泣いても悩みは拭えないけれど、少しは楽になった気がする。 「帰りますか」 辛くて辛くて、哀しいけれど。 私には、一緒に笑ってくれる仲間がいる。 戦ってくれる仲間もいる。 ………自分の事のように考えてくれる、仲間もいる。 そんな事を考えていれば、ほら。 「紫帆ッ!!」 ……蒼だ。 あいつは、私を誰より分かってくれる。 誰より心配してくれる。 大好きな、親友。 「やっぱりここにいた! 探したんだぞ」 「ありがとう」 「ああ。 ……その顔は、少しは楽になったみたいだな」 本当にずっと探してたんだ。 蒼の息が荒い。 「ありがとう」 もう一度そう呟いたら、蒼は戸惑いながら私に目を向ける。 それに何でもない、と返せば、蒼は無邪気に笑った。 ――私の大好きな、綺麗な笑顔で。  
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加