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暫く紫帆に連れられて歩いてると、段々島原っぽい作りになってくる。
………うん、やっぱり最初から紫帆に任せとけば良かったな。
「紫帆、まだ?」
「まだ」
「そっか。 じゃあ―――……」
そこまで言って、口を閉じる。
すぐ隣で紫帆が何か言ってるけど、よく聞こえない。
―――まるで、時が止まったみたいだ。
全然動く事が出来なくて、あるものに釘付けになった。
「――あ、れ………」
冷たい、冷たい瞳。
あたしと、同じ目。
その男はそのままあたしを一瞥して、去って行った。
そして、その瞬間に動けるようになる。
「ちょっと、椿!! 大丈夫?!」
「あ、うん。 大丈夫」
すると紫帆は呆れたように溜め息を吐いた。
「もう良いよ」
「ありがと」
まさか、この出逢いが後々あたしの人生を狂わすなんて、この時は思ってもみなかった。
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