島 原

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―――元治元年二月 如月上旬。 「けほっ、こほ」 あたしは最近、ずっとこの咳に悩まされている。 この咳のせいで夜に何回も起きたり、咳込み過ぎて息が出来なくなる事だってある。 「ねえ椿、やっぱり医者に―――」 「ぜってー行かねえ」 「駄目だって、椿!」 だって、迷惑かける。 紫帆にも、 土方さんにも、 ―――近藤さんにも。 使えなくなったあたしは、いとも簡単に捨てられる。 きっと、あの時みたいに。 『おねえちゃあぁぁぁああん!!』 そう、あの時。 あたしが試衛館に預けられた、あの雨の日。 ミツ姉は嫁ぐから、邪魔になったあたしをどうにかしなければいけなかった。 それで、知り合いだった近藤さんに頼んで、あたしは捨てられた。 「もう、嫌なんだ。 捨てられるのは。 なあ、紫帆には分かるか?」 この、気持ちが。
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