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「……え?」
「分かるかって聞いてんだよッ!!」
――ダンッ
あたしがそう言って壁を殴ると、紫帆の肩がびくりと震えた。
それを見てやっと、今自分がやった事を理解する。
「……ごめん。 暫く一人にして」
一言呟くと、逃げるようにしてそこから走り去った。
――ドサッ
「……ッ」
重い着物につんのめって、思い切り床に転がる。
まだ昼だから、誰も客はいない。
その場に寝転がって、咳について考えた。
………まさか。
暫くして、やっとある結論にたどり着く。
頭に浮かぶのは、
“ 労 咳 ”
の二文字。
……無関係だと思ってた。
だけど最近調子が悪いのも、労咳だとすれば合点がいく。
「労、咳……」
そう呟いても全く実感が湧かなくて、本当に自分の体が蝕まれているのか、分からなくなった。
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