刀 の 理 由

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      * * * ―――嘉永七年七月 文月上旬。 「近藤さん近藤さんッ! 見て見て、土方さんに作ってもらったの! 嫌々だったけど」 「おお、そうか! 良かったなあ!!」 あたしみたいな子供の自慢を、いつも笑顔で聞いてくていれた近藤さん。 その分土方さんは厳しくて、大嫌いだったけれど。 でも、それでも優しくしてくれた。 「おい蒼。 嫌々っつーのは何だ、嫌々っつーのは」 「あはは!! 土方さん怖ーいッ! でも蒼の為にありがと!!」 「――…ああ」 「歳は手先が器用だからなあ。 折り紙は俺じゃなくて、歳に頼めよ」 「うん!」 平和だった。 あの頃は。 あたしはまだ当時十歳で、試衛館に引き取られたばかりの生意気な餓鬼だった。 けれど近藤さんはいつも優しくしてくれた。 ―――こんな、足手まといなあたしに。
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