127人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
「やっぱり近藤さんの為なんだ」
「ああ。 あたしは決めたんだよ。 必ず、強くなるって―――」
「うん、分かってるよ。 大丈夫、蒼の強さは皆が認めてる。 だから泣かないで」
そう言われて初めて、いつの間にか流れていた泪に気づく。
何でかは分からない。
――…あの日あたしは、決意したはずなのに。
「そう言う紫帆はどうなんだよ?」
これ以上考える事のないように、泪を力強く拭った。
そんな顔で、紫帆を見る。
「私は家柄のせい。 男が欲しかった私の母親は、徹底的に私を男として育てた。 当時は悲しかったけど、今なら母親の気持ちが分かる。 ただえさえ落胤なのに、女だったら余計に疎まれるもん」
「………あたしらって、事情がありすぎるよな。 改めて」
「だよね。 ……そろそろ、帰る?」
「ああ」
「そういえば、総司は帰ったら土方さんの説教だね」
「げッ」
「あは、あははは! 何、忘れてたの?」
素直に句集返しなよ、と平助は言う。
本気で楽しそうに言うこいつに、あたしも静かに笑った。
最初のコメントを投稿しよう!