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龍吾はこの街に来て長い。この世界で女を綺麗だと思った事は一度もなかった。
彼女に会うまでは。
朝の光を反射する、艶めく黒髪。陶器のような白い肌。
スラリとした手足にジャケットを肩がけにしていたが、深く開いたドレスの胸元には豊かな谷間が覗く。
鏡のような漆黒の瞳が、龍吾を見つめていた。
シガレットケースを手渡すと、咲き誇る花のような笑顔を見せた。
「ありがとう」
仕事上がりのはずなのに、化粧っ気がなかった。なのに、龍吾が今までに見てきたどの女よりも美しかった。
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