僕が雪を愛せないちっぽけな理由

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「・・・帰るか」 愛しの君とも、これでおしまいなんだろう。 涙で前が霞む。 さすがに上を向きながらは歩けないので、前を向く。 涙が頬をつたい口のはしに付いた。 当たり前のようにしょっぱかった。 そんなことを考えながら数歩進む。 、と人にぶつかった。 「あ すいません」 僕はとっさに謝った。 泣きながら謝る、というとそれこそ凄く反省しているようにとれるがこの場合 別件で泣いて、それで謝っているので反省なんてしていない。 ふと顔をあげる。 目があった。 がっつりと目があった。 本当はほんの一秒程度、 いやそれに満たないレベルの瞬間だったのだろうけど、少なくとも僕には 10秒・・・いや20秒位は見つめあっていたかのように思えた。 ほんの一秒、 今の僕には、いや今の僕じゃなくても、 それに魅了されてしまうには、 充分過ぎる時間だった。 なぜなら、それほどに僕のぶつかってしまった人は美しかったからだ。 かわいらしかったからだ。
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