僕が雪を愛せないちっぽけな理由

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「なんで・・・そんなに泣くんだよ?」 僕に残った彼女に対する最後の疑問 「あなたに人じゃ無いことがバレてしまったからです」 さっぱり話が見えない 僕にバレると何がいけないのだろうか 「さっき言ったように私は何でもない存在なのです 他に認識されるなど許されないのです なのに何故かあなたには私が見えるようです 認識されてしまった以上私は私でいられなくなる つまるところ 死を目前にしたのです」 死ぬのは誰でも怖いのです と彼女は言う 僕は立ち尽くす ただただ立ち尽くす 僕に認識されたから死ぬ それはつまり僕に殺された みたいなものじゃないか いや、みたいなものなんかじゃない 彼女は僕に殺されたのだ 僕が殺してしまったのだ 恐らくあのまま上を向いて歩いていたら僕は少なくとも彼女を殺すことにはならなかったのだろう やはり男は簡単に涙を流してはいけないようだ。
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