イミテーション

2/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「あー! もう、やだやだ!」 ジェシカ・ドーソンは誰にも聞こえないように、口の中でそう呟くと、煌びやかな会場を後にした。 誰も彼女の事を気にしていない。 それぞれが目の前にいるパートナーに視線を注ぎ、熱愛ぶりを他人に見せつけようとしているからだ。 今夜はプロム。 高校卒業を記念して、卒業生みんなが美しく着飾って参加している。 それはジェシカも例外ではなかった。 勿論、パートナーもいる……いや、いた。 しかし、そのパートナーは、彼女が身に付けている宝石と同じ、飾りでしかなかった。いや、ジェシカがパートナーの飾りなのだ。 最初から分かってはいたが、一人になると居た堪れなくなってしまい、ジェシカは会場を飛び出したのだった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!