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話は数時間前に遡る。
ジェシカはもともと、プロムに参加するつもりは無かった。本の虫の彼女は、自分を飾るものにお金をかけるよりも、書店を賑わす大小様々な本にお金をかけていたからだ。
あの、手にずっしりとかかる重みやページを捲る時の紙の感触。新しい本を初めて開く時の、あの独特な紙とインクの混じった匂い。
更には彼女をイマジネーションの渦に巻き込む、美しい文字の羅列。
それら全てが、彼女は好きだった。
だから同年代の少女達が持つようなドレスは勿論、彼女達を魅了して止まない石にも心が揺らぐ事はなかったのだ。
しかし、同室のスーザン・ウイリアムズは違った。
彼女とは全寮制のこの学校に入った時から同室なのだが、ジェシカが書店で本を選んでいる時、新しい服を選び、本を読んでいる時、鏡の前で化粧をしている、ジェシカとは正反対の少女だった。
だが二人は、不思議と仲が良かった。恐らく、お互いの領域を侵す事がないからだろう。
そんな彼女が、ジェシカに頼み事をしてきたのだ。
内容は、彼女の男友達のパートナーが病気で参加出来なくなったので、代わりにパートナーを務めてくれというものだった。
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