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ジェシカは、少し離れた場所にあるベンチまでやって来ると、腰を下ろした。そこで夜風に当たっていると、少しずつ気持ちが落ち着いていく。
雲は無く、少し欠けた月がジェシカに優しい光を投げ掛けている。
星がちらちらと瞬き、お喋りをしているかのようだ。
ジェシカはそんな夜空を見上げながら、ぼんやりといつも行く書店の事を思い出していた。
そしていつも、物静かにレジカウンターの内側に座り、本を読み耽る男性店員の姿が頭を過ぎった。
学校の近くにある小さな書店で、余り一般向けの書籍は扱ってはいない。きっと学校指定の教材を扱い、それで収入を得ているのだろう。その所為か、その店員には本を売る気がないように見えた。
置いてある本も、少しマニアックなものが多いようだった。
ジェシカは常々、この店員が自分の好みで仕入れをしているのではないかと考えていた。
何故なら、彼が読んでいる本は、棚に並べる前のものである事が多かったからだ。
だからジェシカが本を持ってレジに行くと、咳払い等で注意を引かなければならない。
そうして彼はやっと視線を上げるのだが、ニコリともせず会計だけを済ませる。
ジェシカは腹立たしく思うのと同時に、彼の笑顔を見てみたいと思うのだった。
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