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その日も、普通に学校に行って、普通に授業を受けて、普通に友達と帰った。
なのに──。
「(ぼく、死ぬのかな……)」
視界に写るのは、地面と遠ざかって行く黒ずくめの男と思わしき人の後ろ姿。
その手には、妖しく光る銀色の刀が握られていた。
徐々に、視界を塗り潰して行くのは深紅。
彼の腹から溢れ出たそれは、彼から体温と、残り僅かな命を奪っていく。
「(もっと話したかったな)」
思い浮かぶのは、先程別れたばかりの2人の親友。
弱気でうじうじした男の子と、男らしく厨二病な女の子。
「(もっと……生きていたかった)」
もう、動かし難くなった腕を動かし、自らの腹に当てる。
とめどめなく溢れるそれは、収まることを知らない。
「…………!」
誰かの叫び声が聞こえ、次いで慌ただしい足音が聞こえてきた。
その音を最後に、彼の意識は途絶えた。
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