1話目

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……やっぱりか。 ゆっくりと眼鏡を外し、彼は言った。 口元だけが少し歪み、ひきつった笑みを演出している。 君も、かけてみるかい? 彼は私に、眼鏡を差し出した。 受け取り、ゆっくりとかけようとする。 でも私には、かける前から、彼の言いたいことが何なのか、全てわかっていた。 眼鏡を、かけた。 ……ふふふふ。 私は、笑ってしまった。 私の目の前に広がっていたのは、まるで写真のネガのような世界だった。 ただの建物からは白い光。 そして、人々からは黒い光が出ていた。 まぁ人間って、いくらこの町にいるからって、天使みたいにはなれないんだな。 彼は言った。 私は何も言わなかった。 私には、何も言う権利がなかった。 だって、私は人間だから。 そして、彼も人間なのだ。 改めて、人間の怖さを知った。 でも改めて、人間って良いなと思った。 ある、平和な町でのお話。
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