9人が本棚に入れています
本棚に追加
それからすぐに救急車がかけつけて、阿形くんを運んでいきました。
私はしばらくの間、ショックで腰が抜けて立てませんでした。
阿形くんの自殺を見てしまったショック。
それもあるかもしれないけど…。
本当にショックだったのはその後の出来事でした。
あたしの悲鳴を聞いて真っ先に駆け付けたのは坂本先生でした。
坂本先生は阿形くんと木を繋いだロープを、近くにある園芸部室にある“なた”を拝借し、切断しました。
一見落ち着いているように見えましたが、顔を見れば完全にパニック状態なのは明白でした。
その頃には何人もの生徒がその様子を見ていました。
でも、そこに集まった大半の生徒の目は、あたしから見たら明らかに異常でした。
単純な好奇心。
間近で見る人の死を楽しんでいるかのような雰囲気。
「先生、首にロープを巻いたままですよ」
先生に最初に話しかけたのは麻衣ちゃんでした。
しかし…
「麻衣…ちゃん?」
同性なのに思わず見惚れてしまうほど美人の麻衣ちゃん。
誰から見ても模範的な優等生の麻衣ちゃん。
あたしの…「親友」。
そのあたしの親友は…笑っていました。
この状況に平然として。
新しいおもちゃを貰った子供のように。
それは、久しぶりに見る彼女の本当の笑みでした。
最初のコメントを投稿しよう!