第二章「カンケイ」

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それからすぐに救急車がかけつけて、阿形くんを運んでいきました。 私はしばらくの間、ショックで腰が抜けて立てませんでした。 阿形くんの自殺を見てしまったショック。 それもあるかもしれないけど…。 本当にショックだったのはその後の出来事でした。 あたしの悲鳴を聞いて真っ先に駆け付けたのは坂本先生でした。 坂本先生は阿形くんと木を繋いだロープを、近くにある園芸部室にある“なた”を拝借し、切断しました。 一見落ち着いているように見えましたが、顔を見れば完全にパニック状態なのは明白でした。 その頃には何人もの生徒がその様子を見ていました。 でも、そこに集まった大半の生徒の目は、あたしから見たら明らかに異常でした。 単純な好奇心。 間近で見る人の死を楽しんでいるかのような雰囲気。 「先生、首にロープを巻いたままですよ」 先生に最初に話しかけたのは麻衣ちゃんでした。 しかし… 「麻衣…ちゃん?」 同性なのに思わず見惚れてしまうほど美人の麻衣ちゃん。 誰から見ても模範的な優等生の麻衣ちゃん。 あたしの…「親友」。 そのあたしの親友は…笑っていました。 この状況に平然として。 新しいおもちゃを貰った子供のように。 それは、久しぶりに見る彼女の本当の笑みでした。
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