第二章「カンケイ」

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午後の授業は自習になりました。 クラスの所々で阿形くんの自殺の事が話題にあがっています。 前から三列目の窓際に置いてあるバッグだけ置かれた無人の机と椅子。 そこは阿形くんの席でした。 たった1時間前までは…。 阿形くんは入学当初から常に読書をしている男子でした。 彼にはどこか嫌味な感じがあって、話をしたことがある生徒はほとんどいないと思います。 それでも、身近なクラスメイトの死に、皆は困惑していました。 「麻衣ちゃん?」 麻衣ちゃんだけは、いつも通りに凛としていました。 「ん…」 麻衣ちゃんは小説を読みながら。 「里香、どうしたの?」 返事だけをしました。 いつもの麻衣ちゃん。 いつもの麻衣ちゃんなんだけど。 何か変な感じがする。 クラスメイトの死に悲しむわけではなく。困惑するわけでもなく。 その顔に微かに見えた気がしたのは…。 愉快さ。 「ねえ、里香。どうしたの?」 「あ、ううん。ごめんね、何でもないよ」 やっぱりあたしが何か勘違いしてるのかな?
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