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「おはよー。」
「今日の宿題やった?」
「今週のジャンプさあ…」
普段と変わらない中学の日常。今日も昨日も一昨日も、ずっと同じような風景。
「麻衣ちゃん、どうしたの?」
里香の声で我に返る。
「ううん、何でもないよ。」
学校では絵に書いたような優等生。
成績優秀、運動神経も良いし友達も多い。生徒会長とクラス委員長を兼任している。
それが学校での私の姿。
そう、「私」の姿。
気付けば私の周りでは沢山の女子が群がって話していた。
「ジョシハ、ムレルコトシカデキナイノカ。」
少し前にクラスメイトの男子の一人、阿形優斗がボソッ言っていたのを思い出す。
私たちを自分の下に見ることで優越感にでも浸りたかったのだろうか。
私は気にもしなかったけど、阿形優斗の言葉に苛立ちを覚えた数人の女子と彼は低レベルな言い争いを始めた。
当然、私が仲裁に入った。
これもまた、「いつも」と同じ。
「ねえ麻衣ちゃん、聞いてる?それでね、隣のクラスのね…」
里香が話しかけてくる。
「うん…うん。」
文庫本に目を落としながら相づちだけはうつ。
里香は小学生の頃からの「トモダチ」。それだけの関係。
里香は人が良い為クラス内外問わず、全学年に知り合いが多い。おそらくこの学校の女子の中では一番有名だろう。
でも、どうして私に話しかけてくるのだろう。
私に話しかけるより面白い相手は沢山いるのに。
私は、話しかけてほしくないのに。
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