第一章「ヒツゼン」

4/9
前へ
/52ページ
次へ
問題集を一通り解き終わり伸びをすると、関節が軋む音がした。 時刻は23時過ぎ。外では月が淡く輝いている。 シャワーを浴び、布団に入る。 明日も今日と同じ。 「いつも」の日常。 そう一旦考えだしてしまったのが悪かった。 目が冴えてしまい、眠れなくなる。 枕元の携帯電話を見ると時刻は0時少し前。 こんな日には少し散歩でもしてみよう。 私は上着を羽織り寝巻きのまま外に出た。 いくら夏とはいえ、夜は肌寒いものだ。 本当は家の周りを歩くだけのつもりだったが車のライトを避けるうちに近くの川原に来てしまった。 「まったく…何で最近のライトはこんなに眩しいかな」 そんなことをつぶやきながら歩く。 川の流れる音は心を洗ってくれる気がした。 セカイを楽しまない、冷めた私の醜い心を…。 もう帰ろうか。そんな事を思った直後だった。 私は「それ」に一瞬心を奪われた。 ただ空を見上げ、微動だにしないその少年に。 鼓動が早くなる。全身に熱を帯びる感じがする。 私はどうしたのだろうか。少年の何に心を奪われたのだろうか。 明らかに日本人離れしたその美しさに? 月光に照らされてるからか煌めいて見えるその神々しさに? それとも… まるでセカイに拒絶されたような、その哀しさに?
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加