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町内故に自分の名前を知っていたのは何か理由があるのだろう。
だったらこの神秘的な自称宇宙と交信している少年の遊びに付き合ってあげるのも悪くない。
それが麻衣の考えだった。
気付けば予言は終わっていた。考え事をしていたせいで少年が予言をしているところを私は見ていなかった。
「そうだ、まだ自己紹介してなかったね。僕はスバル。麻衣さんがここに来るって知ったのは三日前に予言した時だよ」
また予言か…。
と内心思いつつも私は応えた。
「私はあなたの言う通り、伊藤麻衣。よく私がたまたまここを歩く日に会えたわね。凄いわ」
「だから違うよ。僕は麻衣さんが今日ここに来るのを予言してたんだ」
スバルは膨れっ面で言った。
そんな彼の無邪気が微笑ましくてついつい笑ってしまう。
「でも、どうして麻衣さんはここに来たの?僕は行動は予言できても行動の理由は分からないから」
「寝つけないからよ。少し気分転換」
「じゃあ、どうして麻衣さんは気分転換に来てるのにそんなに冷めた目をしてるの?」
痛いところをついてくる奴だ。
「日常なんてさ、いつも同じでしょ?起きて学校言って帰って寝て」
ふーんとスバルはこっちを見た。
「麻衣さんはオトナなんだね」
「そんなことないわ。さて、そろそろ私は帰るよ」
「麻衣さん、また来てくれる?」
「あなたの予言が当たったらね」
そう言って私は川原から立ち去った。
予言など当たるはずないと思いながらも、なぜか彼とはまた会う気がした。
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