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「そうけ?」
私の弾んだ言葉とは裏腹にアキラさんの声は沈んだ。それと同時にまた目の前から海が消えて、山道に入る
「もうちょいでミヤコん家に着くんやけど……。牡蠣でも食べに行こか。ミヤコにメール送っとこ」
もう一度視界が開けた道路の脇に寄って車を止める
「疲れたやろ?」
車から降りて海を眺める。やっぱり綺麗だと思った
「アキラさんは、ここが嫌いなんですか?」
アキラさんはニッコリ笑って答えない
「こっからは見えへんけど、あの先の湾……」
海を眺める私に近付いて、スッと先を指差す。てか、近い。東京の異性には感じない匂いがする。多分、潮の香りだ
「あっちの湾に芦浜原発の予定地やった所がある」
原発……。福島の記憶も新しい。この綺麗な湾と、原発が何だか噛み合わない
違う。この爽やかな人の口から原発なんて言葉が出るとは思って無かった
「2000年に白紙撤回になったけどな?それまで37年。町を二分して反対派と推進派でぐちゃぐちゃんさせられた」
「え…と。じゃあ、白紙になって良かったよね!福島の事故とかあったし、原発なんて怖いもん!」
「ところがそうもいかん」
アキラさんは私をまた車に乗せて走り出した
「この道な。一応、主要な道路なんやけど、信号なんか1つも無いで」
失恋したのに早い?
アキラさんの事が知りたくなる
アキラさんとこの町の事
さっきよりも車の中が居心地悪くなった
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