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「……緋雨?」
利用することは何も悪いことではない。弱肉強食が世の中の摂理であり真実だ。
だが、それでは何も変わらない。
変わらないのだ。
「言いたくないなら言わなくてもいいよ……だって、いつか教えてくれるんでしょ?」
「なずな………。 ああ、いつか話すよ。きっと、いつか」
緋雨がそう答えたところで、なずなが小さく欠伸を漏らす。
緋雨が時間を確認すると深夜2時を回ったところであった。
「緋雨……なずな眠い」
「そうだね。時間ももう遅いし……なずなはベットで寝ていいよ。僕はソファーで寝るから」
「うん…ありがと」
なずなは部屋の隅に設置されているベットに向かって、うつらうつらと眼(まなこ)をパチクリさせて歩いていく。その後ろ姿は手に大きなウサギのぬいぐるみを持たせたらきっと可愛いのだろう。
緋雨はそんなことをなずなの後ろ姿を見て考えてしまった。不覚にも、自覚は無いが笑いが零れ出てしまっていた。
「ふふっ」
「どうしたの?」
その声が聞こえていたらしく、なずなは今にも閉じてしまいそうな瞳で緋雨を見つめながら不思議そうに聞くのだ。
「いや、なんでもないよ。おやすみ、なずな」
「うん、おやすみなさい」
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