始まりのゲシュタルト

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 さっきまでの焦りを忘れるほどにその疑問だけが彼の頭に残ったようで、彼はその疑問を解決すべくなずなの居るであろう台所に足を運ぶ。 (それ以前に調味料以外に食材なんてあったかな?)  そんなことを思いながら台所に入った彼は、小さな身体を必死に動かしてフライパンを巧みに操るなずなの姿を発見した。  その姿は今まで囚われていたとは思えぬほどに活動的で輝いて見えた。  なずなは台所に入ってきた彼に気がついたのか、その変化の少ない表情を笑みに変えて言うのだ。 「おはよう緋雨。まってて、もう少しでできるから」 「もしかして、僕の朝食を作ってくれてるの?」  あまりの展開に彼は先ほどから思考に疑問ばかりが溢れ返っているようだが、それを一切顔に出さずに柔和な笑みを浮かべて尋ねるように聞く。 「うん、緋雨……料理できなそうだったから」   少し遠慮がちに答えられる。  そもそも彼が起源を覚醒させてからというものはコンビニ弁当や缶詰、ファストフードといったいつでも食べられる簡単な食事に移り変わっていた。その理由としては、今でこそはそうではないのだが血を飲んだ後に食べ物を口に入れることに抵抗があったからだ。あの血なまぐさい飲み物を口にした後では、とてもではないが口に物を入れる気にはなれないだろう。  下手をしたらそのまま食事の最中に戻すなんてこともありうる。  だから彼は料理もしなければ作る必要も無いのだ。だが、作れないということも無いのも彼の言い分なのだがこの際はどうでもいいだろう。 「作れないことは無いけど、作ろうとは思わないからなずなの考えは正しいね」 「怒らないの?」
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