始まりのゲシュタルト

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「?」  なずなの言葉に彼は頭の上に?マークを浮かべる。  何故なら、今の会話に彼が怒るような言葉は何一つ無かったからである。 「だって、勝手に緋雨の家のもの使ってるんだよ」  勝手に使っている。確かにそうなのだが、彼にとってはそれ以上に冷蔵庫の中にあったであろう野菜屑で作られたサラダの完成度の高さや、余り物で上手に作られた朝食を見てむしろ感心しているくらいだ。 「別に怒らないよ。なずなのことをここに連れて来たのは僕だし、料理も作ってくれてる。それを感謝こそしても怒るなんてありえないからね」 「じゃあね、一つ聞いてもいい?」  彼はなずなの言葉に迷わず「いいよ」と二つ返事で返すと思っても居なかったことを聞かれた。 「緋雨は今までどんなもの食べてたの?」 「コンビニ弁当とか外食、あとファストフードで済ませたり、食べなかったり……それがどうかしたのかい?」  ありのままのことを話し、それがどうしたのだろうかという風に彼はなずなのことを見る。  なずなはその言葉に「そうなんだ」と小さく呟くと、何かを決めたというような目をして彼にお願いをするように言う。 「そんなのダメ……だからね、これからは私が作るから、ちゃんと毎日食べて」 「はあ……」 「食べて、お願いだから約束して」  なずなの強い視線に彼は頷くか否かで迷っていた。    正直な話、なずなの提案は彼にとって魅力的ではあった。今まで馬鹿みたいにムダに食費に掛けていた分の資金を減らすことができ、なずなの安全もある程度確保できるからだ。
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