始まりのゲシュタルト

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「移動系の起源持ちの中でも上位の能力者のことだよ。僕との相性は最悪に悪い相手だけど、今までも何とかしてきたから安心して」  事実、彼と移動系の起源持ちの相性は極端に悪い。  何故なら、彼の能力は直接戦闘に大きく偏っている。身体能力の底上げや肉体の復元、血液の流体操作などなど………それも、全ての能力が2ランクほど落ちている状態だ。  本来の彼の起源能力を使用する条件は他者の血液を直接摂取するという前提がある。しかし、彼は輸血パックによる不完全な覚醒状態で戦っているのだ。  よって、彼は魔血の生成量も減少し貧血が常に続いている状態なのだ。つまり、顔色が悪いのはいつものことであるというのもあながち間違いではないのだ。 (けど、僕の能力を使って完全覚醒状態に至るには分が悪すぎる……なんせ、相手は遠距離からのちまちました攻撃だからな) 「少し骨は折れるけど……なずな、見ててもあんまり気分のいいものじゃないから見ちゃダメだよ」 「ううん、見てるよ……緋雨の全部、私は知る義務があるから」 「でも、なずな……分かった。だけど、少しでも気分が悪くなったら目を瞑るんだよ。わかったね?」 「うん」  彼はなずなに見られているということに抵抗を覚えたが、ベルトに付けられているホルスターからナイフを取り出すと自分の手首を淀みない動作で引き裂く。 (信用されてるんだな僕は……けど、複雑な気分だよ)  その光景になずなは辛そうに声を漏らすが、先ほどの言葉は嘘ではないというようにしっかりとその光景を目に焼き付けるように見ている。 「くっ……文字通り身を裂かれるような気分だ」  そう呟く彼の顔色は先ほどと比べなくとも分かるほどに青褪めている。まるで、体温を感じさせない死人のようだ。
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