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「ふん、今までで私の存在に気がついたのは貴方を含めても二人しか居なかったくらいだもの」
そのままヴィヴルは彼から反対のほうに視線を移すが、反対側にはなずなの顔があるために目と目が合う。
「これが緋雨の起源……可愛いな」
「あ、ありがとうね」
彼はそんなヴィヴルとなずなの会話を聞いて小さく笑うと、屋上から屋上に飛び移る。
そして、四つ目の屋上から飛び移った瞬間に彼の視界にそれらしき人影が入ってきた。
「それにしてもらしくない話し方してるじゃないの」
「今はそんなことどうでもいいだろ。で、敵はアイツで間違いないか?」
彼は人影を指差し、もう片方の手で先ほど引き裂いた傷口に爪を立てる。魔血がジワリと滲み始める。
「多分アイツであってる。私も手伝わなくて大丈夫?」
「問題ないよ。瞬間移動は近接戦闘には向かないからね」
「そうね。アレくらいなら貴方で十分か……」
彼は滲み出ている魔血の流体操作をして血液の刃、傷つけるモノ(ラクサーシャ)を成形する。
そして、着地と同時に肩口から胸に掛けて瞬間移動使いの男を切り裂いたはず……だった。
しかし―――
「なっ、どうしてここが……オリジンブラッド」
寸前で瞬間移動されたようで、肩を引き裂くに止まったようだ。
「答える義務はない。何か言い残すことがあれば聞いてやらないこともないけど……何かあるかい?」
「貴方、今も変わらずそんなこと言ってるの? だから敵が増えるのよ……」
彼はヴィヴルの言葉を無視して瞬間移動使いの男の言葉を待つ。
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