プロローグ

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ほんの少し離れた崩れた建物の影から聞こえた彼女達の言う“ダークネス”の手先のものであろう声に二人は身構える。 「くそっ妹はやらせないよ!!」 クロアはそう言って、左手で握りこぶしを作り、敵のいる方に突き出す。その左腕の肘から手にかけての部分は見るからに変化し、その部分はボーガンに姿を変えた。 「これでも食らいな!!」 彼女はそう言って矢を放つ。その放たれた矢はある程度の距離を進んだ瞬間、五本の矢に分裂し、敵の二人組に向かって突き進む。 「「!?」」 その現象に二人組が驚くのも束の間、矢は二人組を貫く。 「ぐわ!?」 「ナズキ!!この先の広場に例の“時空移動魔法陣”がある!これを使ってあなただけでも行きなさい!!」 クロアはそう言って、十字架の首飾りをナズキに手渡す。 「えっクロアお姉ちゃんはどうするの?」 「あたしはここで食い止める!!」 「だめよ!あたしも一緒に戦う!!」 「・・・今のあなたの力では奴らには太刀打ちできない。あなただってわかっているでしょ?私達は自分を使ってくれる“使い手”がいないと、その“真の力”を発揮できないことを。ただでさえその使い手がいないのに、今のあなたの力は・・・」 そう言ってクロアは言葉を繋ぐのを止める。そこから先は言わなくても、ナズキにはわかるからだ。想武に生きる者達は皆、少なくとも二つの武器に変化して戦うことができる。クロアもまたボーガン以外にも変化できる武器がある。しかし、ナズキは一つの武器にしか変化できない。それだけでも、他の想武の者達との実力の差は明らかだった。 「で、でも!それを言ったら、クロアお姉ちゃんだって!!」 それでも引くことのできないナズキに、クロアは首飾りをその首にかけてやり、優しく見つめながら口を開く。 「あなたの言いたいことはわかる。あたしでも奴らに勝てる望みは薄いってことも、それでもあたしは大切な妹であるあなたに生き延びて欲しいの。」 「・・・クロアお姉ちゃん。」 クロアは涙ぐむ妹に笑いかけながら、十字架を両手で包み込みながら祈りの言葉を捧げる。 「どうか、“次元神様”のご加護がありますように、そして妹に素敵なお婿さんができますように・・・」 「・・・・・・はい?」 ナズキは涙ぐむのを止め、少しの間、硬直した・・・
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