見えない恋心

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雪、最近の子供たちは雪が降ると、庭を駆けずり回って喜ぶのだろうか? 僕には、「あ、雪だ」で済ませてゲームの画面に集中している子供しか思い浮かばない。 というか、それは僕だった。 比較的暖かい地域の都会に住んでいた僕は、雪が降ってもつもるなんて経験がなかった。 だから、社会人になったあくる日、父方の実家に宿泊しに行くと、玄関先から屋根の上まで雪で覆われていたのには度肝を抜かれた。 「おう、マーくん。よく来たね」 本名は正信なのだが、親しい親戚の間柄ではこう呼ばれている。 出迎えてくれた祖母に連れられ、僕はこれから一週間自室となる部屋に通された。 そこには、 「ここでゆっくりしていきね」 「ちょっ、おばあさぁぁん!? どうなってんのコレェェェェ!?」 「どうしたね?」 「あ、いや、何でもない……」 訝しそうに視線を送りながら去っていった祖母には見えない。 この家系では、僕だけが唯一見ることの出来る存在。 「おい、起きろ。そこの白いの」 ――妖怪だ。 「あ、……今何時ですかぁ……?」 寝ぼけ眼で訊いてきたそれは、病的なほどに白い肌をしており、黒髪を腰あたりまで伸ばし、一見可愛らしい姿かたちをしていた。 見た目は十七、八くらいだろうか。しかし、恐らくこいつは妖怪。下手すれば百は超えるだろう。 「……三時だ」 「さんじ……? ……あぁ、寅の刻ですか?」 「わかんねぇよ!!」 白い女妖怪をたたき起こすと、それは、段々と目に見えてあせり始めた。 「……へ? に、人間……あれ?」
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