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「ババア、この村ずいぶん田舎だなあ?」
「あぁ、この村は上沢村といってな、若者はほとんど村を出て行き、よほどこの村を好きな奴しかもう住んどらん。」
「実際、家の数ほどひとは居らんよ、畑と田んぼだけの辺ぴな村さ。」
ババアは何故だか誇らしげだった。
「この村の歴史を語ると太古までさかのぼる、太古の昔、ここには神々が住んでおり、人と共にあったという言い伝えじゃ。」
「昔から在んのかこの村。すげえな。」
「だが、今となっちゃそこら辺にある村となんら変わりもしない、ただの田舎じゃよ。」
「ここにきたとき女の子ガキ二人に悪戯されたよ。」
「たぶん、まーことみーこじゃろうな、この村じゃあ有名じゃよ、あと何人か子どももおる。」
「悪ガキめ!いつか、仕返ししてやる!」
「相手にせんほうがええ、あの子達はなあ、親がいないんじゃ、赤子の頃山に捨てられているのを山菜採りにいった婆さんに見つけられ育てられた。本当の親の愛情を知らないかわいそうな子どもたちじゃよ。」
「かんけーねえよ。」
「あの子たちはただ、自分たちは此処にいると伝えたいだけなんじゃ。」
「どんな事情があろうとも悪ガキに育ったことには変わりねえな。」
賢二は丸机の上にある麦茶をコップに注ぎながら言った。
「話してる間にご飯ができたよ。」
そういいながらババアが夕飯をおぼんに載せ運んできた。
久しぶりのちゃんとしたご飯だった。
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