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朝、賢二以外誰も病室にいなかった。
眠れなかったがベッドのなかでいろいろ考えることができた。
これからのこと、死について、本当に死ぬのだろうか、今まで好き勝手生きてきた自分への罰か、まだ四十前にしては早すぎると思った。
だが、自分の生きたいように生きた、それでいい。
残りの命をどうするか、このままベッドで死んでゆくのか、ただ死を待つだけでは吐き気がする。
賢二は考えた。
自分は今まで仕事が忙しすぎた。たまの休みは酒を飲んでだらだらして過ぎていった。毎日同じことの繰り返しだった。
賢二は旅行というものをしたことがなかった。
暇がなかったし、興味がなかった。が、自分が死ぬとわかったら、まだみたことのないものをみたいと思った。
どこかに出かけたいと思った。
そうと決まったら賢二は行動に移すのが早かった。
目が覚めて翌日、賢二は荷物をまとめて黙って病院を抜け出した。
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