出会っとこう

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時は2xxx年。 教育格差が著しくなり、それに伴い学力による経済格差をも引き起こした。 優秀な者は良い会社に入り、名誉ある地位につき、そして裕福な生活を送る。 一方秀でた能力のない者は、そっこらへんのなんか変な匂いのする工場――ロボット居るから俺らもういらなくね?――みたいなところに就職させられ、名誉ある地位どころか『え?そんなところで働いてるのプププ』って馬鹿にされる職場で働いてるから名誉もくそも無いわけで。裕福何それおいしいの?って生活を強いられている。 つまり、選ばれた者は上記のように精錬されかつシンプルな文に収まる現実を生き、一般人は上記のように支離滅裂かつもう必死で生きてるんですほんっとマジでってうざいぐらいに訴えてくる長々とした複雑な人生を歩んでいく。 ちょっと待てその間を生きる人物もいるだろうって思うよね。例えば芸術分野とか運動分野とか部分的に秀でたりする人とかね。ところがどっこい。お父さんが言うには、一昔前はそれが普通だったみたいだけど、現在は違う。黒か白、有色か無色と同じレベルで頭脳格差は広がってしまった。天才は天才、馬鹿は馬鹿、そんな風に二つのジャンルに分けられてしまったのだ。 「おんなじにんげんなのにしゅるいのちがういきものみたいだね」ってお父さんに言ったら怒られてげんこつを食らったのを今でも覚えてる。「そんなことはない。みんなみんなお母さんのおなかから生まれて、産声をあげて、話して、歩いて、走る人間なんだ。馬鹿なことを言うんじゃない」って。 だから私は同じ東京なのに、エリートと平凡組を分けるこの壁が嫌だった。だっておかしいと思わない? 東京のある一定の区域――上層社会の人間が住む都市――に私たちは許可証無しには入っちゃいけないんだって。だから彼らがどんな生活を送っているか全く分からないし知ることも許されない。こういうのって寂しいよね。どこのナチスの時代だっての。 一度だけ。一度だけその扉の向こうに行ったことがある。小さい頃だったからあんまり覚えてないけど、すごく別の世界――今でいう近代都市ってやつ?――だった。私達の住む街は当時とあまり変わってない。けれど、たぶん向こうの世界は今でも発展し続けているんだと思う。
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