仔猫が6回鳴いた理由。

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予想外の行為に 固まって動けないでいる私を見て 先輩は小さく笑い、 その軍手を私の頭の上にそっと乗せ、 「手、気をつけて?」 そう言って自分の持ち場へと 駆けていった。 風が吹き、 軍手がスルリと髪を滑って 足元へ落ちる。 「……――っ」 ぎゅっと、下唇を噛む。 「梨恵ちゃーん、 あっち草引けたから こっち手伝いにきたよ――って、 どうかした?顔赤いよ?」 「…―ううん、何でもない。 ありがと、じゃあ草引こっか?」 しゃがんで、落ちた軍手を拾う。 「……勿体無くて、使えないじゃん」 そっとジャージのポケットへしまい、 私は花壇へと手を伸ばした。  
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