プロローグ

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歩道側に向かって引き寄せる時間は無いと判断し女の子を突き飛ばす 犬はいつの間にか向こうの歩道まで走り抜けていた …中央分離帯辺りなら少なくとも此処で轢かれるよりマシだろう そんな事を考えながら目前に迫るトラックを見る 脇見運転か居眠り運転かは知らないが全くいい迷惑だ 平凡な日常に訪れた刺激でどうやら俺は死ぬ様だ まあそんなに悪くも無い人生だったと走馬灯の様な経験をして 最後に女の子の方をもう一度見て愕然とする 俺が突き飛ばした女の子は 中央分離帯を明らかに越えて 完全に反対車線に飛び出す形になっていた 焦って力加減を間違えたのか火事場の馬鹿力が悪い意味で発揮されたのか 或はその両方か 「逃げッ」 ドンッ 逃げろと言おうとして果たせず 撥ねられ薄れゆく意識の中で 俺が最後に見たのは 反対車線で女の子に迫る乗用車だった
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