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長野県 松本市
「・・・!!」
夕日がスモークガラス越しに差し込む、黒塗りのレクサスの助手席で小木倉賢司(おぎくら けんじ)は眼を覚ました。
「.........すみませんでした。居眠りなんかして」
「お前が任務中に居眠りなんてめずらしいこともあるもんだな」
賢司が小さく頭を下げると、運転席に座る筋肉質の体躯を持つ男性が言った。
彼の名は田澤明人(たざわ あきと)。車のエキスパートであり、フランス外人部隊出身の破壊工作のプロフェッショナルだ。
「しかし...寝汗すごいぞ。これ使うか?」
そう言ってハンドタオルを差し出す。
賢司はどうも、と礼を言うと寝汗でぐっしょりと濡れた体を拭く。
「くそ...嫌な夢を見たな」
明人に聞こえない小さな声で呟いた。
10年前。アメリカで起きた「ロサンゼルス空港爆破テロ」
彼はその生き残りであり、家族を失った。
当時6歳である。
その後、いくつもの施設を転々と渡り歩き、行き着いたのが
内閣直轄組織である「内閣諜報本部」のエージェントだった。
今、彼らは新たな人材のスカウトのため、夕暮れの住宅街の路地でターゲットが帰宅するのを待っている。
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