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秋の夕暮れは早い。ものの数分で日は落ち、夜空を月が、星が照らす。
『こちらフォックス02、マルタイ(対象)そっちに向かうよー帰宅まで予想3分ってとこかな?』
レクサスのダッシュボードに取り付けられているデジタル無線機が、数百メートル先で同じように監視をする風早七海(かざはや ななみ)の軽い声を告げる。
賢司は「はいはい」と返事をして待つこと、きっちり3分でターゲットが帰宅した。
ターゲットは少女だった。
身長は170センチくらい。背中まで伸びた黒髪をヘアピンで止めている。どこかの高校の制服であろうミニスカートからは健康的な足が伸び、筋肉のラインがうっすらとうかがえた。彼女はケータイを片手に開きながら歩き、いかにも現代女子高生といった感じだった。
少女が家の中に消えて少し経ったところで、いままで無言で後部座席に座っていた男が「行くぞ」と声を掛ける。
賢司は無線でフォックス02へ仕事を開始することを告げ、バックミラーを使い、着ているスーツのシワを伸ばす。
次いで、骨伝導マイクを首筋に貼り、懐のホルスターからFNファイブ・セブンを取り出し、キャッチボタンを押してマガジンに実包が入っているのを確認して戻す。最後にサングラスを掛けて明人と共に車を降りた。
(さあ、ミッションスタートだ)
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