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朝方、まだ暗い時刻、玄関の呼び鈴が鳴った。帰ってきた。
オレと妹は表に出た。
家の庭には両親とYサン、知らないスーツ姿の人も数名、そして黒いバンの車…。
車が玄関の前に付き、スーツの人達が荷台のドアを開ける。そして中からストレッチャーを引き出すと、そこに乗せられていたのは…
…「弟…」だ……。
「嘘だろ…?…寝てるだけ…だろ…?」
ただ茫然と、そんなふうにしか見えなかった。
玄関からすぐ横の、昔オレ達兄弟3人の寝室だった部屋に入れた。
母が弟に「家に帰ってきたよ。」
事の経緯を簡単に聞かされた。
オレが弟の死を実感したのは、弟の顔に触れた瞬間だった。
冷たかった。その途端、涙が出た。止まらなかった。
表情は、ただ寝てるだけにしか見えないし、胸の辺りにかかってる布団も呼吸してるかのように本当に動いて見えた。でも実際は、そうあって欲しい…という願望が見せた目の錯覚で動いてなんかいない。
謝りながら泣き乱れるYサン、あんなふうに泣き崩れる両親と妹。それもツラ過ぎて心が痛かった。とても見てられなかった。
「人はそう簡単には死なない」
これまでオレは普通にそう思ってた。
一気に日常から非日常に突き落とされた気がして「実感」を「現実」とは受け入れられなかった。
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