第二章―旅立ちの朝霧―

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 記憶にあるロリルは素直になれない少女で、それでも優しさが滲み出てくるような少女だった。  記憶でしか知らない少女。言葉を実際に交わして見て、記憶通り…いや、一年近い年月で成長していることが窺えた。  マリモは振り返ることなく、王都を立ち去る。  現在マリモには記憶はあるが、感情というものが欠けていた。  マリモが”マリモ“でいられたのは、看病してくれていたリルカ王女たちに逢った一度目だけだ。  ずっと騙している感じがして苦しかった。それでも記憶にある”マリモ“の意志を尊重しようと頑張ったが、やはり限界だった。  このままでは、何が真実で偽りか分からなくなる。そう悟ったマリモは、王国を離れることにした。  ”マリモ“が最期に願ったのは、何なのか。何をしたかったのか。  それを理解しない限り、もう王国へ戻る気はなかった。  偽りのマリモであることに、ほとほと疲れていたのだ。  感覚的に言えば、前世を覚えている赤ちゃんに近いだろう。  記憶通りに演技しようとしていたが、そう上手くできるはずもなく、墓穴も幾つか掘ってしまった。  だが、そんな複雑な環境ともお別れだ。しばらくは自分を知らない者たちのいるところで生活する。  そう考えると、今まで張り詰めていた心が解放されたようで居心地が良かった。  朝霧の中に隠れ、薄い影となったマリモは王国から去ろうと歩いて行く。  その後ろからは、小さな影がこっそりと忍び足で追いかけている。  どうやらマリモの旅が一筋縄ではいかないことを予感させる。そんな光景だった。  第一幕 完
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