序章―暗闇に存在する光―

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 暗い、暗い、薄暗いところにいた気がする。時たま差し込む光が眩しく、その光に近づかなければならないような気がして、僕は光へと懸命に走る。  だが、光はすぐさま消えゆくと、僕はまた暗闇の世界へと置き去りにされる。  また独りだ。寂しいけれど、なぜか居心地は良かった。  ただ毎日、いや一日が過ぎているのかさえ分からないなか、僕は光を求め走り続け、また闇に呑まれることを繰り返していた。  そんな時に、一人の女性の姿が脳裏に浮かんだ。  綺麗な金髪、剣を振るう勇ましい姿。一体誰だろうか。  知らない女性のはずなのに、なぜかその姿を見ていると胸が苦しくなる。  僕は、この女性を知っているのか?  分からない。だからこそ、僕は光へ向かってひたすら走るのだ。  光へ近づく度に、その女性の姿は鮮明になっていく。  さらに、走ると脳に酷い痛みが起こる。まるで脳が、光へ近づくなと警鐘を鳴らすかのように。  だが、僕はその女性を知りたいという欲求を抑えられなかった。  なぜならば、その女性はいつも僕の顔を見て悲しそうに視線を伏せるのだ。  その姿を見ると、胸が張り裂けそうになる。  護りたい。護ってあげたいと思ってしまう。
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