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もし、森村さん達が戻ってこなかったら……どうなるのだろう。
小原さんが動けるようになれば、こちらから森村さん達のところへ移動できるんだけど……
小原さんが、目を覚まさないことには……最悪の場合、野宿なんてことになる……こんな寒いのに……裸で野宿するなんて無理だ。
もし、ここで野宿するとなると、なにも身に付けず小原さんと抱き合って一夜明かすしかない……ヒルの恐怖と寒さに耐えながら……
私が小原さんを守る……それしかないけど……衰弱してる小原さんには危険すぎる……
小原さんは、はたして、持ちこたえられるだろうか?
それにしても森村さんや西村さんはなにしてるんだろう……
もう、戻ってきてもいいはずじゃない……
向こうは5人もいるんだから……
赤川さんのことは気になるけど……
もう少し待つことにしようか……
私は、少し落ち着こうと思い……私のリュックの中から煙草とライターを取り出し……煙草をくわえ火を点けた。
一服して、心がほんの少し安らいだが、煙草の煙を吐きながらも……裸身の肌身にあたる寒風を感じて……身体を丸め、小刻みに震えた。
ぷるぷる肌を震わせながら、こんな時こそ……熱い珈琲を飲みたいなって……つくづく思った。尾根通しの道から山腹道に抜けたところにあったお茶屋さんの珈琲が美味しかったのを思い出した。
あれこれ気を巡らしてみた。
とりあえず、今はやれることをやろう。
小原さんの体温は復調してるはず、彼女をおこしてみるか?
もう、周囲は薄暗くなっている。
移動するにしても早く行動しなくては……照明などないのだから、暗くなってからでは移動するのは危険すぎる。
私は小原さんの傍らに身を寄せた。
ヤブ蚊が集ってないかと心配したけど……
小原さんの首から下は、森村さんの青色のカッターシャツと、私のピンクのジャケットなどで覆い隠していたのが幸をそうしたのか……
ヤブ蚊は影も形もない……
小原さんのすべすべした綺麗な顔には、ヤブ蚊に咬まれた形跡がなくて……私は安堵した。
私は我が身をヤブ蚊に曝したことが無駄ではなく、小原さんを守れたことが……嬉しくて、嬉しくてしょうがなくて……胸が高鳴った……
嬉し涙で小原さんの美しい顔がぼやけてしまう。
私は、うるうるした涙目で、しげしげと小原さんの顔を見つめた。
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