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「小原さん、ごめんなさい…
私のせいで小原さんをこんな目にあわせてしまった。
私がしっかりしてなかったせいなの。
辛いでしょ、痛くない?」
小原さんは何も応えなかった。いや、話ができる状態でなく、発声が無理な状況かも…
微かに小原さんのクチビルが震えていた。
小原さんは今、全身に集られたヒルから一気に血を吸われている…
平常な対応ができるはずがない。
小原さんは僅かに体を動かすのでさえ困難なようだ、ピクリともしない。
今の彼女は瞬きするのがやっとみたい…
小原さんは、この状態でも私に気を使っているのだろう…
優しく微笑んでくれてる…
ようにみえる。
小原さんの潤んだ瞳に私への慈愛を感じた…
小原さんは見た目が美しいだけの人じゃなく心も美しい…
私は小原さんを絶対、死なせてはいけない!
やれるだけのことをやろう…
私は心に誓った。
私は蛭が指の1本、1本にまで、こびり付いてて、デロデロと夥しい出血で血みどろの彼女の左手を両手で優しく握りしめて…
小原さんに話しかけた。
「小原さん、ヒルなんかに負けないで…
私が小原さんを守るからね!
すぐ、戻ってくるからね、頑張るんだよ!」
そう言って私が立ち上がろうとすると…
小原さんは微かに首を横に振った。
小原さんの目から大粒の涙が零れ落ちた。
小原さんは私に何か伝えたいのか、クチビルをプルプル震わせている…
私は小原さんの頬に軽くキスした。
そして、急いで、周囲に散乱してる衣類やリュックを総て回収し、私は斜面を駈け上っていった。
斜面の急な勾配を登りつつ…
ふと思った。
小原さんは 死 を覚悟している。
小原さんは私の足手まといになることを畏れているのかも。
私のことなんか、どうでもいいのに…
私のせいで、あんな酷い目に遭ってるのに…
私は…
小原さんを、何が何でも救いたい…
私はどうなっても構わなかった。
やっとの思いで、勾配を登りきって…
私は林道にでた。
ライターで周囲を照らしてみたが、ヒルはいないみたいだ。
ここに小原さんを連れてきて救援を待とう、それしかない。
私は手に持っていた衣類と荷物を地面に降ろした。
斜面途中にある急勾配は、身動きとれない小原さんを連れて来るには厳しすぎる。
でも、やるしかない…
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