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「まぁ、あなたには問答無用で入ってもらうから」
「俺には?」
「ええ。あなたは、とても敏腕な助手になりそうな顔をしてる。私には分かるわ」
「顔って……」
飽きれる山吾を無視し、少女はスッと右手を差し出す。
「よろしく頼むわ。私は、赤猫。十九歳よ」
山吾は目を見開く。
――まさか、自分より二つ年下とは。しかも未成年なのに事務所経営って。ていうか名前。
「で、あなたの名前は?」
ホラッと右手を前に出して促す赤猫。
その瞳が強力な自信に満ち溢れていて、あまりに眩しくて。
「山吾。山下山吾だ」
「サンゴね。変わってるけど、良い名前じゃない」
天使のような笑顔を見せる赤猫。
そんな彼女を、山吾は少し信じてみたくなったのだ。
絶望の淵に立たされた自分を救ってくれる、世界で唯一の存在ではないのかと。
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