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そして二人は手を握り合って。
「じゃあ、早速事務所に行きましょう」
「あぁ。でもお腹がさ……」
「心配しないで。食料はたんまりあるから。服も、スーツなら溢れるほどあるわ」
淡々と当たり前のように言葉を並べる赤猫。
「……外にバイクを停めてあるから。あなたは後ろに乗って」
「悪い」
「あと、借金については後で番号を教えてくれれば、私が明日直接話して振り込むから。もちろん、電話は公衆電話でね」
「なにからなにまで……」
――まさかこれは死に際に見る一種の夢ではないのか。
彼はそう思って頬を引っ張ってみたが、意に反して痛かった。
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