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十分ほど時は流れ。
「着替えた?」
「あぁ。あ、トイレ借りたから」
「電気は消してよ。……って似合うわね」
赤猫は感動した様子で呟いた。彼が選んだのは特別他と変わりない上下紺色のスーツ。ネクタイは燃えるような単色の赤だ。
「……へぇ。ここが、事務所の本堂か」
十五畳ほどある正方形の室内には、ところせましと並べられた本棚の壁。
一辺だけに開かれた窓際には、赤猫が使用するであろう木製の洒落た机と黒革の椅子。
傍らには、観葉植物のフランスゴムの木がその身をくねらせて佇んでいる。
そして、室内中央の客用テーブルには湯気立つ花柄の小皿が数枚。
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